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虹の橋 その2

2004/10/1(金)〜10/25(月)名古屋・御園座 35回公演
公演時間は
1幕 65分/休憩 30分/2幕 75分/休憩 25分/3幕 45分 でした。

斉藤由貴さんのおめでた降板で急遽、主演が有森也実さんに代わったこの舞台。斉藤さんとは、やはり悲しいお話だった「空のかあさま」で共演されてますから、楽しみにしていたので残念した。でも、有森さんともドラマで共演が多く、雄基さんも幼馴染のようだと記者会見で話されたようで、今回の舞台は自然に演じられたのではないでしょうか。悲しい身の上でたくさん泣かせてくれた田中美里さん、貫禄ある棟梁役で田中健さん、千代を心強く支える水野久美さんに、大きなお母さんの山田スミ子さん。抜けたようでありながら、子供をしっかりと躾けてるのが懐かしい感じのお父さん役・坂本あきらさん。女にはまり落ちて変わり様が凄かった山路和弘さんと、恐いほどの啖呵を切る久世星佳さん。久世さんの手がとっても綺麗でした〜(笑)
魚惣の若旦那役・木下政治さんと、弥市役の山賀教弘さんがところどころに笑いを加えてくれました。山賀さんは、「南太平洋」にも出演されてらっしゃるのですよね。
千秋楽のカーテンコールで有森さんが良い共演者に囲まれと挨拶されていたそうですが、本当にしっかりとした舞台になっていたかと思います。

今回のレポートもかなり長くなってしまいました <(_ _)> それだけ良い舞台だったということで(笑)
セリフの京都弁は私が覚えてる限りなので、かなり怪しいですがお許しくださいませ。

一幕
--1781年 宗椿長屋 井戸端--
京都・遠くのほうに八坂の塔が見える宗椿長屋。1軒の戸があいて幼い千代ときくの姉妹が肩を落として出てくる。そのあとから出てきた兄・富士太、長屋の表を目に焼き付けるように見渡す。富士太の奉公先が決まり、父親と出かけるところだという。母親を亡くしている姉妹には兄がいなくなるということがひどく悲しい。富士太にすがりつく、きくと千代に「もう会えないというわけでもあるまいし」と娘たちを笑わそうとする父・九兵衛(山路和弘さん)

長屋の住人も次々と表にでてきて奉公先に赴くという富士太に祝いの声をかける。手に職をつけた職人になるのが一番、宗吉もいつかと話す宗吉の父・忠七(坂本あきらさん)に「職人は嫌や!辛気臭いわ!」と腕を組んで大人びたことをいう宗吉。だが「うちは職人さんが好きや。大きいなったらお父はんみたいな職人さんのところにお嫁にいくんや」と千代。「こないなこと言いますのや」と照れたような、娘が嫁に行くのを想像し寂しがるような顔を浮かべる千代の父・九兵衛。千代にそう言われ「お千代ちゃん、ほんまか?」と、さっきまで職人が嫌だといっていた宗吉だが千代の言葉が気になる。そんな二人を見ていた弥市が「宗吉と千代はあやしいぞ!」と囃し立てる。周りの大人たちもそんな子供たちのやりとりを微笑ましく見守っています。 
と、また一軒の戸があいて千代と同じ歳ほどの女の子が飛び出してくる。富士太にお守りを差し出す貴和。嬉しそうに受け取る富士太。そこに「貴和!」と咎めるように、貴和の父・式部が長屋の一軒から出てくる。「朱に交われば… こないな奴らとつきあってたら、ろくなころはない」と長屋の住人たちを馬鹿にして娘を叱る。住人たちも「何を!」とざわつくが、富士太の父・九兵衛がまぁまぁと諌める。「色んな人がいますよってな」と気にかけないに九兵衛。「九兵衛さんはホンマにいいお人や」と言われると「死んだ女房もそこに惚れた言うとりましたわ」と惚気まででて、再び和やかな雰囲気になる。

富士太を送り、残された子供たち。子供たちには長屋でリーダ的存在の富士太がいなくなる寂しさのほうが大きい。宗吉が励ますように船溜まりにクズ炭拾いに行かないかと誘う。千代は、それならと貴和も誘おうとするが、父親の式部がでてきて面倒になると弥市が止める。仲間はずれは可愛そうと宗吉に同意を求める千代だが、宗吉も貴和は誘わないほうがいいと言い出す。怒った千代は「それならウチも行かへん!」と妹・きくの腕をひっぱり家に引っ込んでしまう。弥市は「二人で行こう!オナゴなんかいてへんほうが楽しいわ」と強がるが、落ち込む宗吉も家に引っ込んでしまう。一人残され、怒って地面を蹴る弥市。かわいーぞぉ(笑)

--1783年 宗椿長屋 井戸端(宗吉10歳)--
弥市の奉公先が決まったその日、お祝いにお頭つきの鯛をどう工面するかと困りながらも嬉しそうに相談する弥市の父・勘助と母・粂。それに宗吉の母・さだ(山田スミ子さん)が加わる。せっかくのごちそう、千代ときくを誘おうとすると 戸が開いて妖艶な姿をしたお琴(久世星佳さん)が出てくる。怪しげな音楽が流れます。はじめて見る顔におどろく3人。あとからでてきた九兵衛に、誰か尋ねると言いよどみながら田舎からでてきた親戚だと答える。どう見ても素人とは思えないお琴を家に迎える気ではないだろうなぁ。。と心配する3人。

そこに宗吉の父・忠七が戻ってくる。弥市の奉公先が決まったことを話すとわが子のように喜ぶ。だが、自分の息子である宗吉は職人は辛気臭いと、父親がもってくる奉公の話に首をたてに振らず、八坂の塔に登りたいと訳のわからないことを言い両親を困らせていた。いい加減にしろと怒る忠七のところに、京でも1・2の腕前を持つという宮大工の長左衛門が訪ねてくる。大工仕事に興味をもつ宗吉を見込んだ長左衛門は宗吉を自分のもとに預けてみないかと話をもちかける。宮大工は修行の厳しい仕事、何をするかも分かってないのではないだろうかと、さだは心配するが、家から出てきた宗吉は両親と長左衛門の前で 「宮大工になりたいんや。八坂の塔に登りたいんやない!八坂の塔みたいな塔を建てたいんや。棟梁のところで仕事をしたいんや!」と声をあげる。どこへいっても苦労をするのだったら、好きな道で苦労をさせたらどうですやろ?という長左衛門に忠七とさだは頭をさげる。「ほなら、大工になってええんやな」と喜ぶ宗吉。

喜ぶ宗吉たちとは、逆に千代ときくが二人でトボトボと戻ってくる。お腹がすいたと嘆く きく。きくは「お父はん、もっとあのヒトの服買うのやろうか。櫛と下駄も買うのやろうか。あのヒト、買うて買うて言うてはってたもんなぁ」と事情が分からないまま不安そうに姉の千代に尋ねる。きくをたしなめながら、朝の残りでご飯を作ってあげるからと立ち上がらせ膝の埃を払ってやる千代。なんだか、もう… 宗吉といい千代といい、いじらし過ぎます。

--1787年 宗椿長屋 井戸端(宗吉14歳)--
14歳になった宗吉(雄基さん)と弥市(山賀教弘さん)が薮入り[お正月とお盆に奉公人が休みをもらい、実家に帰り休息する日]で長屋に戻ってくる。頬を赤くして前髪のある雄基さん。井戸端の桶に腰掛け、幼い頃の思い出を話す二人。正月はそれだけで楽しかったと、わらべ歌を歌い出す。「正月来たら、なに嬉し お雪のようなママたべて 割木のような魚(とと)そえて おこたにあたって寝ん寝こしょ」と歌う宗吉に、歌にあわせて踊る弥市。雄基さんのわらべ歌にびっくり。お調子者の弥市の踊りも楽しいです。宗吉の家の戸があき、母・さだが出てくる。挨拶もせずに、はしゃぐ二人にびっくりしながらも、息子が戻ってきたのが嬉しいよう。

井戸端で話す、さだと粂の前に 悲鳴をあげて、きく(大沢さやかさん)が表に飛び出してくる。後を追って、お琴(久世星佳さん)も飛び出し、きくに「その金をよこしなはい」と迫る。「これは、うちと姉ちゃんが内職して貯めたお金や。あんたのお酒買うために内職したんやない」と抵抗するきくだが、千代(有森也実さん)に諭されお金を渡す。妹にひどくあたるお琴からきくを守ろうと、自分が酒を買ってくるからと千代。騒ぎを聞いて表にでてきた長屋の住人たち。継子をいじめるお琴に腹がたつ。いい加減に頭にきたと宗吉が、話の分かる町年寄を呼んでくるというが、千代に止められてしまう。千代のためを思って、心配することなどないのだと言う宗吉だが 千代は余計なお世話だ!子供の頃とは違うのだから勝手に分かったようなことを言わないでくれとキツイ言葉を宗吉にあびせ、駆けていってしまう。お琴が父につらくあたり、父が悲しむところを見たくない千代は必死にお琴をかばうのだった。勝ち誇ったように宗吉に嫌味を残し家に戻るお琴。長屋の住人達も呆れながら、それぞれ戻っていく。ただ一人、宗吉だけが千代の去っていった方を眺めている。「お千代ちゃん。なんでやねん。なんでやねん!」と嘆く宗吉。雄基さんにスポットライトです!


--1788年 宗椿長屋にほど近い寺の境内--
参拝にきた宗吉と弥市。宗吉は「これからしばらく薮入りにも長屋に戻らないかもしれない」と口にする。千代のことなら気にするな、お琴と一緒に住むうちに意地の悪いのが移ってしまったのだと励まそうとする弥市。千代のことではなく、一人前になるまでは仕事に頑張るのだと強がる宗吉。ここで、先に帰ろうとする宗吉を弥市が「待ってえなぁ」と呼び止めるのですが、振り返った宗吉「やじゃ!」とからかうように駆けていきます。幼い雄基さん、とても40歳には見えません(笑)

宗吉と弥市のやりとりを聞いていた、きくと千代。きくは千代に、父親を思ってのことだと宗吉に説明し、仲直りするように勧めるが千代は「仲良うなれへん。仲良うならんほうがええんや」と悲しい思いを語る。
兄・富士太(新田純一)がやってきて千代と、きくにお年玉をくれる。千代は自分の分をきくに渡し、欲しがっていた鞠を買ってくるように勧める。千代は富士太に相談があったが、その話はきくに聞かせたくないものだった。また、怪しい音楽が聞こえてきます。
正月にお琴を気持ち悪い男が訪ねてきて、千代を見ながら、器量がどうの 年季がどうのとコソコソ話していたという。千代の話を聞いて、「その男は女衒や!お琴は千代を遊郭に売って左団扇で暮らす気なんや!」と怒る富士太。千代も予測がついていたことを兄の口から聞き、兄に助けてくれるよう泣きすがる。そんな千代に 絶対に遊郭なんかにやらない、今度またその男がくると分かったら、きくを走らせて自分に知らせろと心強く約束してくれる富士太。

鞠を買って戻ってきたきく。兄の富士太は早々に奉公先に帰ってしまう。寒いなか、家に帰りたいきくだが、千代は帰りたくない様子。「うち姉ちゃんが家に去にたくないワケ知ってるんえ」と前にも父とお琴が絡むところを見たと口にするきく。思わず千代はきくを殴ってしまう。泣き出すきく。そして千代も泣き出す。正月だというのに寒い戸外で声をあげながら泣く姉妹。
そんな二人を心配そうに見つめる女性がいた。錦小路の魚屋・魚惣の糸栄(水野久美さん)だと名乗り、亡くした娘の墓参りにきたのだ、生きていたら千代ときくと同じぐらいだと寂しそうに語る。きくが投げ捨てた鞠を気に入った、娘の墓前に供えたいからよかったら譲ってくれないだろうかと頼む。せっかくの鞠だが、二人はどうぞ持っていってくださいと承諾。そんないじらしい二人に糸栄は「お代」と多すぎるお金を渡す。多すぎると断る千代に 糸栄は私からのお年玉と優しげに話し、錦小路にある大きな店だからいつでも遊びにきてと誘う。見ず知らずの人だが、優しさに触れたきくはふと「うちらもこんなお母はん欲しかったなぁ」と漏らしてしまう。

--1788年 宗椿長屋 井戸端--
長屋の住人たちが皆戻り、静かになってきたころ、貴和(田中美里さん)と両親が隠れるようにして表に出てくる。溜まった棚賃[家賃]を払えないためこっそりと逃げてしまおうとする父・式部。病で伏せてる母親を気遣い、優しい住人がいる長屋を出ていきたくないと泣く貴和。
そこに、きくに連れられて富士太が戻ってくる。父親の情けない姿を見たくないと薮入りにも戻ってこなかった富士太は貴和と会うのも久しぶり。嬉しそうに駆け寄る二人。富士太は首にかけていた貴和からもらったお守りを見せ、大事にしていると伝える。だが、咳き込む母親を医者に連れて行くと名残惜しそうに両親についていく貴和。何度も何度も振り返り、富士太に手を振る。

そんな貴和が気になるものの、千代が自分を呼んでいる理由が分かる富士太は心配そうに家の戸をあける。家のなかではお琴があれだけいじめていた千代に自分の着物を着せ、お化粧もしたほうがいいなぁと猫なで声で話しかけていた。富士太は千代を女郎にすることだけは止めてくれ、お琴が来る前は親子4人で楽しかったやないかと、父・九兵衛に頼むが 酒とお琴に溺れる九兵衛には全く効き目がない。
お琴も、はっきりと千代に「あんたには島原に行ってもらうで。恨むのやったら甲斐性なしの父親を恨むんですなぁ」と嘲るように告げる。さらに手付け金3両も受け取っており、約束を反故にするためには相場で3倍返し9両が必要だという。
ついに、富士太は懐から隠し持っていたノミを出す。いざという時にと覚悟を決めていたのだ。父、そしてお琴を殺してやると追い回す富士太。と、外は空が真っ赤に染まり、火事を知らせる鐘の音が響く。九兵衛とお琴も外に出てきて、富士太が追い回す。ついには父を追い詰め、刺してしまう。息を引き取る瞬間に「かんにんなぁ」と優しかった頃の面影を見せる九兵衛。富士太はお琴をもおいつめ、鬼の最後だとノミを振り、刺し殺す。崩れ落ちるお琴。ゆっくりと振り向いた富士太の顔と手は血で真っ赤。鐘の音が鳴り響き、赤い空。壮絶な最後です。


二幕
--1788年3月 宗椿長屋 宗吉の家--
与力の藤波(松山政路さん)を囲むように長屋の住人が集まっていた。藤波の言葉を待つ住人たち。張り詰めた空気がツライです。何度も話をごまかす藤波に、いいかげんにしてくださいと さだ。富士太の処罰がどうなるのかが気になっていたのだ。親殺しの罪は死罪で磔。だが、お琴のさまざまな悪行に加え富士太がまだ16歳であること、妹たちを思っての仕業だったことで、寛大なお裁きをと期待していた。だが、藤波が告げたのは18歳になるまでの2年間、牢獄で高僧のもと反省を積み、18歳になってから死罪に処すとの悲しい裁きだった。富士太は偶然、ノミを懐にいれていたのだろう?と減刑するように働きかける藤波には応じず、最初から殺すつもりだったと言い切ったという。「兄はもうこの世に未練がないのやと思います」と千代。16歳で自らの命を犠牲に妹を守った富士太。

残された千代ときくは忠七夫婦が引き取るといい、忠七は娘ができると喜んでその場を笑わせる。そこに糸栄が、二人を魚惣で預からせてくれないかと話を切り出す。事件があった場所の近くにいるよりは、噂の届かない魚惣のほうが幸せかもしれないと考える忠七。千代は一所懸命働けば役にたてるかもしれませんと、きくと二人魚惣に行くことを決意する。寂しがる忠七夫婦だが、さだは「宗椿長屋は二人が生まれて育った家や。二人を待ってる人がいるんや。薮入りにはきっと帰ってくるんやで」と二人を励ます。山田スミ子さん演じる さだがとても大きな愛情を見せます。


--1790年7月 錦小路・魚惣の店内--
魚惣では千代ときくはよく働き、気のきく千代は魚惣でもなくてはならない存在になっていた。糸栄の一人息子・信之助(木下政治さん)が千鳥足で朝帰り。いかにも放蕩息子な歩き方、振る舞いが素敵です(笑)木下さん公演回数を増すにつれ大きな演技になってました。
糸栄がいることに気づいて踵を返した信之助は千代にぶつかってしまうが、慌てて誤りながら前掛けで汚れをとろうとする千代に「魚くさいんじゃ!」と怒鳴りつける。そんなに魚くさいのが嫌だったら戻ってこんでええ、出ていきなさいと 糸栄に叱咤された信之助は「出て行ってやるわ!」と啖呵切って去っていくものの、後から糸栄の「そっちに出口はありまへんで!」という声(笑)

一人で店番をする千代のところに疲れた顔をした藤波が訪ねてくる。その顔を見た千代。兄の富士太が牢獄にいれられ2年目が過ぎようとしたことで、藤波が伝えにきたことに気づいてしまう。その日の朝、富士太は静かに処刑された。。。と
「千代ときくには自分のことを忘れて、昔のことは忘れて、幸せを掴めと言い残して… 刑場に引かれていった」と涙をこらえて告げる藤波。その知らせを聞いても、千代は藤波にいろいろとお世話になりましたと礼をいい、自分は大丈夫だからと けなげに振舞う。藤波が去ったあと、一人残された千代は幼い頃に富士太に買ってもらった提灯を持って町内を歩きまわりながら歌ったわらべ歌を涙を拭いながら口ずさむ。「さーのやーの糸桜 盆にはどこもいそがしや ひがしのお茶屋のかどぐちに あかまえだれに糯子の帯 ちょっと寄らんせ はいらんせ 巾着に金がない のうてもだんないはいりゃんせ おう辛気 こう辛気」

--数日語 宗椿長屋--
富士太の亡骸を引き取って葬式の日。宗吉も戻ってきてひさしぶりに千代・きくと並ぶ。弥市も奉公先から戻ってきて神妙な顔をしてお悔やみの言葉を述べる。だが舌をかみながら、たどたどしい(笑)「無理せんでええで」と宗吉。久しぶりに会う千代に「最後に会ったのはいつやったかな」と声をかけるが、代わりに弥市が口を挟む。「あれやないか?あの大晦日。琴の鬼ばばぁが千代ちゃん苛めるのに見かねて… そしたらお千代ちゃん余計なことせんといてーって」と思い出したくないことを口にする弥市。慌ててて「あぁ、そやったな」と宗吉「忘れたとは言わせへんでぇ〜 お前、すっかり落ち込んで〜。まぁ無理もないけどな。お前は千代ちゃんのこと好きやったもんなぁ。」とからかう弥市。立ち上がって弥市をたしなめる宗吉。弥市は宗吉を交わして。。。「お千代ちゃんかて宗吉のこと好きやったんやろ」余市、いい人〜とか思ったら。。。「まぁ昔のことや。お千代ちゃん、しばらく会わん間にべっぴんになった。これなら錦の男たちもほっておかへんやろう。もう、誰かおるんやないかぁ〜」と、どうしたいの弥市?(笑)でも、これに一番反応する宗吉( ̄m ̄〃)ぷぷっ! そんな宗吉を 弥市ときくも笑う。ツライなかですが、ほんの少し幸せが見えてきた感じがしました。

長左衛門が焼香にやってくる。富士太の詳しいことも聞いてきたという。千代と宗吉を前に、宗吉の働きぶりが変わったのは2年前、ちょうど、事件のあったころからだ。「宗吉が2年でぐーんと腕を伸ばしたのは千代さんのおかげや。千代さんの思いをバネに奮起したんやないか?」と長左衛門。宗吉もそれを認め、「お千代ちゃんを幸せにできるのはワシしかおらん。早く一人前になってお千代ちゃんと所帯を持つんやと思ってきた」と吐露する。だが千代は自分は罪人の妹だから、宗吉のために一緒になれないと言う。長左衛門は「八坂の塔のある法観寺。その向かいにあるのが庚申堂。ひっそりと寄り添うように佇む庚申堂があるおかげで、八坂の塔が高く立派に見える。人間も抜きん出て世に出て行くためには寄り添って支えてくれる人が必要だ」と千代を説得し、千代もついには宗吉の気持ちを受け、抱き合う二人。
それを見ていた弥市。きくに「覚えてるか。わしが小さいときに言ってたこと」きくも頷きながら「うん。宗吉と千代はあやしいぞ。宗吉と千代はあやしいぞ。」と涙ながらに囃し立てる。今度は弥市も大きな声で嬉しそうに囃し立てる。「弥市、うるさい!」と、水場にあったかぼちゃをなげつける宗吉。場内には笑いがあふれ、やっと幸せになれる!という雰囲気が流れます。

--1793年 正月 錦小路・魚惣の店内(宗吉20歳)--
それから3年後。奉公人が帰省し静かになった魚惣に信之助が慌てたようすで帰ってくる。急いで家に入り、戸を締める。物音に気づいて顔をだした糸栄を誤魔化し奥に入ろうとした瞬間、戸を叩く音。支え棒を握り、殴りかかる構えをしながら戸を開ける信之助。と、顔をだしたのは宗吉でした。糸栄の看病のため薮入りをしなかった千代にひと目会いたくて寄った様子。

宗吉が帰ったあとに更に戸を叩く音が。。。戸を開けると、飛び込むように入ってくる、柄の悪い男・磯吉(九兵衛を演じた山路和弘さんが二役め)九兵衛にそっくりなその姿に嫌な予感がします。何の用です?と訊ねる糸栄に「あぁっ!言うてもええんやろうか」と信之助が自分の妻・お艶を寝取った、正月からそんなことじゃ構いませんなぁと脅かす。お艶(お琴を演じた久世星佳さんが二役め)も入ってきて、またまた不穏な空気。息子を守るためにと金を渡してしまおうとする糸栄。その瞬間、お艶と磯吉がしめたとばかりに目をあわせる。信之助は嵌められたようです。
と、だまって見ていたお千代が金を払ってはいけないと糸栄を止める。「この女をよう知ってます。お父はんを腑抜けにさして、うちときくを苛め抜いて、とうとう兄ちゃんを殺してしまった。兄ちゃんが死罪になったのもこの女のせいや」とあの火事の日を思い出す千代。ついには「兄ちゃんの敵をとってやる」と調理場の出刃包丁を構えます。お艶にかかっていったところを信之助にとめられる。正気に返るお千代。響き渡る泣き声が悲しいです。
そんなお千代を見ていたお艶が「もう、許してやったらどうえ。いつまでも恨んでいて苦しいのはおまはん自身やで」と言い残し、金も受け取らず命が助かったのだからと帰っていった。いつまでも人を恨んでいたら自分が不幸になると気づくお千代は、なんだか救われた思いがしたと話す。
そんな、お千代の裏側を知り、それでも懸命に生きている千代を嫁に欲しいと言い出す新之助。お千代は可愛いが、魚惣の女将としてお千代を迎えることには抵抗のある糸栄。お千代も宗吉のことがあるだけに困惑するだけだった。

--1793年 6月 島原妓楼「津国屋」--
宗吉は出世した祝いと兄弟子たちに連れられ遊郭にやってきていた。遊びになれている兄弟子たちに比べ、カチコチな宗吉。相手を選ぶこともしない。そんな部屋に叫び声をあげながら、遊女が駆け込んでくる。嫌な客から逃げているようだが、遊郭を仕切る女将は厳しく叱りあげる。その遊女の顔を見た宗吉は貴和であることに気づく。殴られた貴和を庇い、自分の相手は貴和にして欲しいと頼み込む宗吉。
二人になると貴和は懐かしそうに長屋の幼馴染の話をはじめる。千代・きく・弥市 そして富士太はどうしてるかと訊ねる。苦しそうに富士太の死を告げる宗吉。狼狽する貴和に富士太の事件を話す宗吉。富士太が琴たちを殺したのは火事の日だと知った貴和はその前に富士太と会ったことを宗吉に話す。最後に好きだった貴和と会えた富士太。宗吉もそれだけはよかったと口にする。「浮世の最後にひと目だけでも好きな人に会えたのやからな」「好きやったなんて」という貴和に「知ってたやろ?富士太ちゃんがお貴和ちゃんのこと好きやったこと」と尋ねると「うちも好きやった」と口にする貴和。もしかしたら今頃は夫婦になっていたかと思うと、二人が巻き込まれた不運が涙を誘います。そして、千代が島原に売られなくてよかったと、ここは地獄と「渡ろ 渡ろ あの橋渡ろ 虹の橋渡ろ…」幼い頃に歌ったわらべ歌を歌い、泣き崩れる貴和の悲鳴にも近い泣き声が場内に悲しく響き渡ります。


三幕
--1793年 6月錦小路・魚惣の店内--
魚惣では、放蕩息子だったはずの信之助が 心をいれかえ店の中心になって働いていた。去年とは比べ物にならないほど働く信之助に、他の奉公人たちは驚き、糸栄は喜ぶ。だが、信之助が一生懸命働くのも千代への思いを糸栄に認めてもらいたい一心からだった。そんな信之助を見た糸栄は千代に頭をさげ「お千代を嫁にもらうためだったら、私は何でもしまっせ。誰にだって頭をさげまっせ」と、魚惣の嫁に来てほしいと懇願する。困惑する千代。
店番をする千代のところに近くまで来たという弥市がやってきた。宗吉が薮入りでもないので長屋に戻り、飲めない酒で荒れていると、貴和のことまで話してしまう弥市。千代は死んだ兄・富士太が貴和のことを好きだったことを思い返し、自分は兄のおかげで女郎にならずに済んだ、富士太が生きていたらきっと貴和を助けただろう… 自分に何かできないか一人問う。

--数刻後 宗椿長屋 宗吉の家--
宗吉は酒を飲みながら、苦界でもがいてる貴和を助けてやれない自分を責めていた。そこに長左衛門が訪ねてくる。弟子たちから聞いた貴和のことを訊ね、身請けに必要な20両も自分が立て替えてやってもいいと言う。だが、身請けをするということはその女の一生をも引き受けることだ。どうするのか考えているのか?それに20両というお金を返すのは並大抵のことではない。お金になる仕事ばかりするようになり、腕が落ちてしまうかもしれない。宗吉の夢だった八坂の塔より大きな塔を建てるというのは夢で終わることになるかもしれないと、もう少し考えてみるように忠告する。「大人になるいうことは子供の頃からの夢をひとつひとつ捨てていくことかもしれへん。最後まで残ったのがホンマの夢。寂しい人生もそれがあるから生きていけるのかもしれへんなぁ」と長左衛門。
と、その話を 家の外で千代が聞いていた。

--錦小路・魚惣の店内--
魚惣に戻った千代は、信之助と糸栄に、自分のようなものでよかったら信之助の傍に置いてほしいと結婚を承諾する。その代わりというわけではないが25両貸してほしいと糸栄に頼む千代。金が人間を駄目にすることもあると知っている糸栄は千代に25両の使い道を尋ねる。貴和を助けたいと話す千代に 糸栄は黙って25両を差し出し、さらに信之助に与力・藤波のところまで行って一緒に島原に行ってくれるようにお願いしてくるよう言いつける。
糸栄は千代に宗吉のことは諦められるのか?信之助と宗吉、母親の自分が見ても宗吉のほうが器量がうえだと正直に口にする。信之助の最近の改心を見た千代は「若旦那さんはええお人でおます。これから一緒に暮らしたらもっとええところが見えてきますやろ。私にはもったいない人でござります」と、そして宗吉は自分の五重塔だという。遠くから拝むだけでいいのだと。。。塔の下まで行ってみたくはないのかと聞く糸栄。「うーんと歳をとったら孫の手をひいて塔の下までいってみるのもいいかもしれまへんなぁ。小さいころにこの塔を建てはった棟梁と仲が良かったんやで、そないなこと孫に話してやるのもいいかもしれませんなぁ」と明るく話す。宗吉を諦める決心をした千代にゆっくりと頭をさげる糸栄だった。


--井戸端 宗椿長屋--
貴和が帰ってくると聞いた、きく・弥市、それに宗吉が長屋に戻ってきていた。どうして千代が貴和の身請けに必要な金額を知っていたのか、どうして糸栄が25両もの金を出してくれたのか、宗吉には納得いかないことばかりだ。
藤波に連れられて、貴和が戻ってきた。遠くから長屋を眺め、変わってないと涙を流す。それを見ていた藤波は待っていた3人を指して「あの連中は、ほんの少し大きくなっているがな」と口にする。涙の再会です。全てが悪い夢だったのだ、忘れることだと言われ、変わらない幼馴染に囲まれた貴和の顔には笑顔も浮かぶようになる。幼い頃、クズ炭拾いに行こうとして、千代が貴和も一緒に行かないなら自分も行かないと言ったことを思い出す弥市。あの頃に戻ったようだ。
だが、ひとり宗吉は憮然としたままでいた。千代と二人になり、どうして20両ではなく25両なのか、自分に相談してくれなかったのかと千代を問い詰める宗吉。千代は宗吉に残った5両を差し出し、これで貴和が生活できるよう小さな店でも出してやってくれと頼む。宗吉と長左衛門の話を聞き、「宗吉さんの夢のため、どんなことをしても私がお金を作ろうと思いましたんや」「どんなことをしても?」と問う宗吉に自分は魚惣の嫁に行くからと千代。
「25両のため今度は自分の身を売ったのか」と千代を責める宗吉。「幸せを独り占めにはできへんもん。皆、一緒にこの長屋で大きくなったんやもん」 誰かがひもじい思いしてたら食べ物を分けてあげないと、誰かが辛い思いをしてたら幸せを半分分けてあげないと、それでも自分にはまだ半分の幸せが残っているからと千代。「半分の幸せ?」と涙声で聞く宗吉。優しい人達のなかで元気に働ける幸せ、三度三度の食事にありつけられる幸せ、自分の身の丈にあった幸せ、そして 宗吉の建てた塔を毎日拝む幸せ。。。塔をきっと建ててくれと言い残し去ってゆく千代。
「みんなが同じだけの幸せ」とても奥ゆかしい考えですが、あまりにも切なすぎます。
ひとり残される宗吉「なんでやねん。千代ちゃん。なんでやねん」子供の頃にも呟いた言葉をまた口にする。宗吉の目から涙がポロポロこぼれます。床をたたくように突っ伏した宗吉。

と、明るい音楽が流れ、舞台後方の電気がつきます。長屋の戸からは幼い頃の千代・きく・宗吉・弥市が現れ、貴和もやさしそうな父・母に囲まれ幸せそう。長屋の住人たちも次々と表にでてきて、まだ宗吉が幼かったころ、皆が優しくて幸せだった頃の風景が再現されます。さらに、富士太も戸からでてきて、仕事にでかけようとした父・九兵衛に弁当を忘れないように渡す。「あほなお父ちゃんやなぁ」「あほなお父ちゃん、お父ちゃん」と千代ときくの姉妹が跳ねる。宗吉と弥市が喧嘩するのを、宗吉の母が笑いながらたしなめる。毎日が幸せだった頃。大人たちが仕事にいったあとは子供たちが揃ってクズ炭拾いに消えてゆく。今はもういない富士太を先頭にして。。。

と、幼い頃の千代が一人もどってきて うつ伏せている宗吉を心配そうに眺め 駆け寄って肩をたたく。顔をあげた宗吉「お千代ちゃん…」 差し出される手を握り、ゆっくりと立ち上がって千代に連れられ舞台から消える宗吉。
あんなにも辛く悲しい別れを宗吉はなんとか乗り越えて、立ち上がっていくのだろうなぁと思わせる最後でした。


もう、拍手です。一度降りた幕が再度あき、カーテンコール。宗吉と子供たちそして長屋の住人が出てきます。雄基さんの合図で子供たちが「おーい」と声をかけると、有森さんが他の子供たちに囲まれて花道からやってきます。雄基さんの顔には泣いたあとが残ってるものの、笑顔になって手を振ってくれるのがとても嬉しい最後でした。一幕で幼い子供が奉公にでていき、幼馴染達が巻き込まれる世の不条理、千代と宗吉の別れと、ずーっと泣きっぱなしの舞台でした。本当は嗚咽をあげて泣きたいぐらい(笑) それでも最後は悲しいままに終わらせない。音楽も舞台装置もとても素敵な舞台で、最後の雄基さんに圧倒された舞台でした。

投稿者 sato : October 27, 2004 10:01 PM
コメント

山田スミ子さんのとても大きな愛情のところがぐっときました。
「みんなが同じだけの幸せ」のところは泣きそうです。
本当に本当にそうなんだけど。でもー。うゎ〜ん。
今のリアルな世の中でそうゆう考えを持つ人は、はたして何人いるんでしょうね。
いるとすれば、かなーり過酷な状況をかいくぐって生き延びてきた人なんだろうなと思います。

すばらしいレポートを拝見しました。
タダ読んじゃってすみません。の気分です。ありがとうございました。

Posted by: さかた : October 30, 2004 09:05 PM

長いのにおつかれさまでしたー 
是非、見ていただきたい舞台でした〜 東京でも再演してほしいなぁ
山田さんよかったですよ〜 「家政婦は見た」の役とはかなり違いました(笑)

>「みんなが同じだけの幸せ」のところは泣きそうです。
>本当に本当にそうなんだけど。でもー。うゎ〜ん。

そうね〜 自分は幸せなんだなぁとか思うけど、それを人に分けるってことは
なかなかできないですものね。口だけでならいくらでも言えるけど、そうではなくて。
色々なことに気づかせてくれる舞台でした。
自分の幸福を分けてあげたいと思う人がいるということも
ある意味、幸せの一つなのかも。。。

Posted by: sato : October 31, 2004 09:27 AM

satoさんお疲れ様でした!
本当に詳しいレポートで、舞台の感動を再び思い出し・・・・
有難うございました。

いい舞台でしたよね。
その一言に尽きます。あ〜もう一度、もう一度観たい!
子育て中の私にとっては、あんな長屋の人情が本当に羨ましく、
金銭的な苦労はあっても、ある意味幸せな人達だなと思わずにはいられませんでした。
でもやっぱり・・・お千代と宗吉かわいそうだよ〜(涙)

Posted by: かりの : November 1, 2004 03:32 PM

>いい舞台でしたよね。
>その一言に尽きます。あ〜もう一度、もう一度観たい!
ホントいい舞台でしたよね〜 再演していただきたいですね

>子育て中の私にとっては、あんな長屋の人情が本当に羨ましく、
>金銭的な苦労はあっても、ある意味幸せな人達だなと思わずにはいられませんでした。
お金には代えられない幸せがありましたよね。
あの温かい雰囲気にも涙を誘う理由が。
かりのさんもお子さん大変でしょうけど、幸せがありますよね(笑)

Posted by: sato : November 5, 2004 06:33 PM
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