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イブラヒムおじさんとコーランの花たち

2005/07/27・28(3公演) 東京 博品館劇場

作:エリック=エマニュエル・シュミット
翻訳・演出:青井陽治
翻訳:武藤洋
作曲:稲本響
主催:OnTime

舞台、上手に籐製のイスとサイドテーブル。
サイドテーブルの上には水差しとグラスが置かれていました。
下手のピアノに稲本響さん。その横にクラリネットを持った弟さんの稲本渡さんが座ります。
お二人が音を確認したあとに、上手から雄基さんが登場!
白いシャツに、黄土色のパンツ、足はデッキシューズとラフな格好。
2時間弱、座りっぱなしで、朗読を行うのですから楽な格好なのでしょうね。髪も降ろしてます♪

以下、ネタばれあります

「11歳のとき僕は僕のブタを壊し、女を買いに行った」
まだ幼い男の子が豚の貯金箱に貯めたお金で娼婦を買うくだりからはじまったときには、どうしようかと思ってしまいました。感動作ではないの?みたいな(笑)
「200フラン。それが相場だった。パラディ通りの女の子、一人の」
嬉しそうな笑顔が雄基さんの顔に浮かびます。もうこのときの雄基さんは11歳のモモでした。

パリの裏町、ブルー通りのアパルトマンに父と住むユダヤ人のモモ。母は兄のポポロを連れてモモが幼いころに出て行ってしまったと聞かされている。
母の代わりに、料理・洗濯 いっさいの家事をこなすモモなのに、父親は兄ポポロと比較しモモを否定してばかり。厳格に一日ずつ生活費を管理する父親を欺くために、モモは近くの乾物屋のイブラヒムおじさんのお店から万引きをはじめる。「だってさ、アラブ人だもん」心のなかでそう言い訳しながら。
イブラヒムおじさんはアラブ人ではなく、イスラム人だった。毎日、ほんの一言の会話が交わされる。

そんなとき、映画の撮影でブルー通りにブリジット・バルドーがやってくる。ブリジット・バルドーがイブラヒムおじさんの店に入ってくる。
「お水、あります?」
「もちろん。マドモアゼル」
「ありがとう。いかほど?」
モモとイブラヒムおじさんだけではなく、綺麗なブリジット・バルドーが確かに見えました。
優雅な喋りをするブリジット・バルドー。スターを迎えても物怖じしないイブラヒムおじさん。狭い乾物屋での女優と貫禄あるおじさんの遣り取りが見えました。
ブリジット・バルドーから水の代金としては高すぎるお金を受けとったイブラヒムおじさん。モモが「ずうずうしいなぁ」と言うと、「だって可愛いモモ。お金を取り戻さないと。お前が盗んだ分をな」 バレてましたね。

でも、おじさんは「これからも盗む必要があるなら、私のところから盗むんだ」と守ってくれ、さらに、様々なことを教えてくれます。
高級なワインに安物を混ぜること、父親に出すパテはドッグフードを…(笑)
モモの全てを肯定的に認めてくれ、導いてくれる。娼婦を買うモモに「はじめは専門家に学ぶことはいいことだ」と、そして愛の大切さもそれとなく。思春期のモモには自分を認めてくれる存在が必要だったのでしょうね。

笑えないモモになぜ笑わないのか?とイブラヒムおじさん。お金のある人が笑うのだというモモに、笑うから幸せになるのだと。
モモは学校の先生相手に試してみます。算数の問題が分かりません。「どっかーん。にっこり」モモは凄い武器を手にいれました(笑)
「もう一度、説明しましょうね」と先生。信じられない!怒られない!「凄い!びっくり!うっとり」
雄基さんの表情がクルクル変わります。笑顔という武器が意外な威力を持つということを知ったモモ。
町の娼婦にまでこの武器を使うモモ。また、うまくいきます。
でも父親には通じなかったり… それとも少しは通じたのでしょうか?

山のような蔵書を持つ父親より、「コーランに何が書いてあるか知っている」というイブラヒムおじさんがたくさんのことを教えてくれる。
イスラム教徒なのにお酒も飲むイブラヒムおじさん。「私はスーフィだからな」
スーフィ(イスラム神秘主義) = 戒律よりも心のあり方を重んじる 
戒律を重んじた結果が自分の父親のような暗さしかもたらさないのであれば、とモモはイブラヒムおじさんと同じように戒律主義に反対することを選ぼうと決める。信仰を守るために戒律というのは確かにおかしいですよね。心が先であるべきかと。でも、ユダヤ人の少年がイスラム教を信仰するというのは凄いことな気がします。

失業した父親にまで捨てられるモモ。父親の置手紙を読みながら「あっ、そう」 悲しみを堪え、耐えるモモが健気です。
養育義務のあるはずの両親が自分を捨てたこと、自分が誰にも愛してもらえない存在であることは、誰にも知られてはいけない!自分は誰にも愛されない存在ではないことを証明しなけらばならない!懸命に父親がまだ一緒に暮らしているように振舞うモモ。
そんな健気なモモをイブラヒムおじさんは海を見に行かないかと誘ってくれる。ノルマンディの海へ。そして、モモは泣きだす。やっと泣くことができたのでしょうね。
夕景を想像させる厳かな演出・音楽が奏でられます。生演奏もよかったです。ブリジット・バルドーがやってきたときには賑やかで華やかに。セーヌ川の散策では煌びやかな音楽が、セーヌ川の水面を見せてくれます。イブラヒムおじさんと歩くモモ、楽しげなキラキラした音楽でした。


「いつ僕を養子にしてくれるの?」冗談にしてしか言えないだろう、でも、きっとモモの本当の気持ちですよね。「明日にしようか。お前がよければ」 幸せなシーンでした。
モモが養子になるのはたくさんの法的手続きを踏まなければならない。でも、おじさんは諦めなかった「私たちのポケットにはたくさんのNonがある。あとはOuiを引き出すだけだ」

お祝いに車を買って、イブラヒムおじさんの故郷へ行こうと。「だったら、空飛ぶジュータンで行かない?」甘えるモモが可愛いです。セールスマンに「息子」という言葉を何度も口にするイブラヒムおじさん。「まるで世界ではじめて自分が、父親と息子という関係を発明したかのように」 ちょっと困った感じを装いながら、誇らしげなモモが浮かびます。

車に乗ったものの、運転の仕方が分からないイブラヒムおじさん
「運転の仕方を忘れたよ。あの頃とは車が違うから」
「その車って、まさか馬がひく車じゃないよね」
「いいや、ロバがひく車だ」
「最悪な感じですね」
「かなりな」
もう、なんですか?(笑) この二人。

結局、モモがハンドルを握ってパリからイスタンブールへの旅にでかけます。
「高速道路はバカの道だ。地点から地点へ移動するためだけの道だ。お前と私は幾何の問題を解いてるわけではない。旅をしているのだ。よい道を探しておくれ。たくさんのよいものを見せてくれる」素敵な旅行ですよね。楽しみながらきっと沢山のことをモモはイブラヒムおじさんから学びましたよね。
イブラヒムおじさんが踊りに連れていってくれるとテッケといわれる道場へ。スーフィ主義の人が集まる、集会所のようなものでしょうか?平衡感覚がなくなるまでグルグル回り続ける。祈るように回ることで、怒りが薄れていくモモ。自分を捨てたことを懺悔する母をも許す気持ちになる。

そして、ついにイブラヒムおじさんの故郷に着きます。しかし、おじさんが事故に。急がずゆっくりと豊かな人生を送ったイブラヒムおじさん。「ブルー通りは素敵な通りだった。ちっとも青くはなかったがな。そしてお前がいた」
最後にイブラヒムおじさんを喜ばせようと、涙を我慢して、モモは笑顔を見せます。「どっかーん。にっこり」 雄基さんも悲しみを抑えて、笑顔を見せる。目には涙があふれて。とっても印象的なシーンでした。

モモはおじさんの店・財産、そしてコーランを受け継ぎます。ときどき母親と会い、妻と子供達に囲まれるモモ。
最後までモモの目線で一人称で語られるのですが、それでも温かく豊かな情景がたくさん流れていきました。正直、朗読劇と聞いたときには楽しめるのかな?と思ったのですが、自分の想像ですから好きなようにモモやイブラヒムおじさんをイメージできて。不思議で楽しい時間でした。だって想像の源が雄基さんの語りですから♪
そうそう、お話を聞いて想像するには目をつむりたくなりますよね?でも、つむると雄基さんの表情が見れない!最初の方はジレンマでした(笑) でも、雄基さんにモモやイブラヒムおじさんがちゃんと重なって見えて、今年続く雄基さんのチャレンジングな活躍を楽しめた、贅沢な時間でした。

投稿者 sato : July 28, 2005 5:01 AM
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コメント

昨日の昼の部イブラヒムおじさんとコーランの花たちを見て来ました。会場に着くと入口付近に松井マネージャーがいらっしゃいました。あっと思ったのですが、照れやな私は声をかけられませんでした。でも松井マネージャーも格好良いですね。よく見たら。(失礼)それから雄基さんへのお花のチェック今回は有森成美さんだけでした。たしか前もあったな〜。仲良いのかな?なんてかんぐったりして。さて朗読なんて行った事ないのでどんな感じなのだろうと内心ドキドキでしたが、舞台と違って始めから幕が開いていたのに驚き。演奏者2人が来られたあと雄基さんが登場前髪下ろしたサラサラヘアーの雄基さん。白いシャツに黄色っぽい薄でのズボンとても41歳とは思えない若いな〜。
ピアノなどの演奏と雄基さんの朗読のコラボレーションで正直始めは何か違和感を感じたのですが、だんだん内容にのめりこみ、頭の中に絵が浮かぶようになりました。
最後まで聞いていて感じたのは、人生の勉強になったな〜素敵なおじさんでした。私にもほしいなあんなおじさんなんて。朗読の中での私のツボは雄基さんの「ドッカーン・にっこり」って言うところでした。 なんか可愛い。しかも何回も言うので。練習の時雄基さん言うのに照れなかったかな〜なんて余計なお世話な事が頭に浮かんだりして。チョットっと思ったのはクーラーききすぎだったこと。寒くて終った後頭が痛くなってしまいました。
2時間ずっと読み続けて間違えないように、しかも感情を込めて読むのって大変だろうな緊張感あるな〜。しかも昨日は夜の部もあったし体力気力のいるお仕事だな〜なんてまたまた余計なお世話な事を考えたりして。
雄基さんお疲れさまでした。

Posted by: あやこ : July 30, 2005 12:36 AM

どうもどうも 毎度の詳細レポ、お疲れさまです。
この正確さに、例の「疑惑」は依然残ったままですが(笑)←ウソです。

本当に素敵な作品でしたよね (゜-゜*)
satoさんが大感動&大洪水だったのも納得です(笑)
私もお父さんの置き手紙を読むシーンで、ジ〜ンときちゃいましたもん。
あの「あ、そう」のさりげなさが逆に胸に迫る感じで…。

あと、BBがブルー通りに来る場面、音楽が変わったみたいですね。
私は雄基さんの朗読でポーっとなってたので気づかなかったんですけど(^^ ;;)
パリの喧噪を表したようなあの音楽、27日は一瞬だったのが
28日はフルで演奏したんですって。
言われてみれば長くなってたような。。。?
生演奏もよかったですよね♪ イケメン稲本兄弟。

雄基さんの朗読、リズムがよかったと思いました。
モモの子供らしい話し方と、イブラヒムの初老の話し方との間で、
たまに雄基さん自身の話し方が見え隠れした気がしません?
お父さんに「どっかーん!にっこり」する場面での、
”これはつらい。一日の終わりに”とか。
あそこ好きなんですけど(笑)
朗読劇そのものとしてもすごくよかったと思いますし、
ファンとしてもすっごく良い体験したなぁ、という感じがしました。

で、8月はテレビ3本 (^-^*)
satoさんもいろいろ忙しいですね! (あ、私もか)

Posted by: たまる : August 2, 2005 10:04 PM

うーん。短くまとめるコツを学んできますわ

> あの「あ、そう」のさりげなさが逆に胸に迫る感じで…。
父親に捨てられて辛くないわけないのに、無理に意地
張ってる感じが、グッときますよね。
朗読なのに、すごい表現力でした。

音楽は私も言われれば…という感じですが、2日目のほうが
あのシーンの音楽の印象が強い気がします。
クラリネット演奏者の渡さんと雄基さん、無言のコンタクトで
しっかりした意思疎通も成功の一環ですよね。

いつもの中村義裕さんのレビューでも褒めていただいてます。
全体的にも好評です
http://www.yumekoubou.co.jp/Enpaku/review/review106.htm

いよいよ明日、ドラマですね〜
オフィシャルにも他2本の放送日がUPされました♪

Posted by: sato : August 4, 2005 1:31 AM
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