2005/04/15〜24 THEATRE1010 「あぢさゐ」
原作:永井荷風
脚色:久保田万太郎
演出:青井陽治
役名:鶴澤宗吉
出演:水谷八重子、宮川浩、伊藤みどり、田口守、小泉まち子、立松昭二
山吹恭子、佐藤太三夫
東京・足立区にあるTHEATRE1010。701席とあまり大きくはない劇場でしたが、2004年に開館したばかりと とても新しく綺麗な劇場でした。舞台入り口前のカフェエリアにはサインが飾ってあるのですが、むかって左から2列めの上から2段目に今回の出演者のサインが。もちろん雄基さんのも飾ってありました。歴史ある劇場になって、このサインがずーっと残っていくといいなぁ。
相対的に100年以上の歴史のある新派。正直なところ 面白いのかなぁ〜?という気持ちでしたが、意外にも劇場の空間を広く使って、幻想的で楽しめた90分間の舞台でした。
駒込にある寺
下手の扉にスポットライト。線香と手桶を持った白髪まじりの宗吉が入ってくる。客席通路を反対側まで渡り、何かを思い出すように辺りを見渡す。さらに舞台に向かって歩を進め、本来は一列目の客席があった場所に作られたスロープをゆっくりと登り、舞台へ。墓に手にしていた線香を供え、添えられていた枯れた花を抜き、新しい花と代える。水を打ち、お墓の前にしゃがむ宗吉。
そこを白いスリーピースに傘をステッキ代わりにした老人が通りかかる(さらに眼鏡に帽子というスタイル。永井荷風らしき老人)。墓の前の男性とは顔見知りのようで「宗さん」と声をかける。母親のお墓か?と訪ねられ… 先生にならと縁のあった芸者の墓なのだと打ち明ける宗吉。妻には内緒で墓を建てたのだと。その話に興味をもった老人は、詳しく聞こうかと男を飲みに誘う。男も聞いてやってくださいますか、と嬉そうに老人についていく。
この宗吉、50歳に近い役だったようですね。白髪交じりの雄基さん、客席通路からのちょっと驚いた登場でした。
石原・荒物屋の二階
時代が大正に変わって間もなく、宗吉が30歳になったころの話。
宗吉と水谷さん演じる君香は古い荒物家の二階に隠れ住んでいた。義太夫三味線弾きの宗吉は三味線の稽古をしながらも上手くいかないようで横になってしまう。君香が入ってきて暑いからと冷たい水で絞った手ぬぐいを差し出す。新橋の芸者・丸次とも深い仲の宗吉に、家を空けて大丈夫なのかと心配する君香。宗吉はいざとなったら「姉さんぶった年上の女。ぐずぐず言ったら別れるばかりだ」と言い、それよりと君香の前の男・〆蔵の心配をする。「私の方から兄さんにもう一度お目にかからせてくださいってお願いしたのよ」甘ーい声で宗吉にすがる君香。すごいぞぉ!(笑)
隠れてばかりの生活に疲れたのか、君香に髪を結ってくるようにお金を渡し、その後浅草にでも出かけようと誘う。喜んででていく君香。
宗吉のところへ新橋の芸者・丸次(伊藤みどりさん)が踏み込んでくる。君香とは違って ぱしっと手入れの行き届いた格好の丸次。名前の知れた芸者である丸次は「未練に邪魔はしないから立派に世間晴れてその女と添い遂げて御覧なさい」と見事な啖呵。さらに手切れ金も渡す。すごーっ。。。格が違います。その代わり別れると証文を書けという。あまりにも見下された宗吉だが思うところあるようで筆をとって書き始める。一筆書けと言ったものの、実際に宗吉が墨を持ち筆を構えたときに見せるハッとした丸次の表情。書き始めた宗吉の背中を見ながら暗転間際に崩れながら座りこむ。自分より格下の君香に宗吉の気持ちが移り、惨めな様を見せる宗吉がイヤなようです。未練がないはずはないのに、見事なプライド。
厩橋河岸
君香は町で周旋屋(芸者の斡旋をする職業)の山崎(田口守さん)にあってしまい、捕まってしまう。ちゃんと話をしに行くからと約束するが山崎はもちろん信じることはできませんよね。しつこく後をつけてくる山崎を、なんとか言いくるめて別れることはできたが、必ず住み替え(芸者が置き屋を替わること)の相談に行くからと約束させられてしまう。さらに遅くなってしまった言い訳を宗吉にどう説明したらいいのか困惑する君香。
そこに君香を探す宗吉が通りかかる。「どこほっつき歩いてたんだ!どんな思いでお前の帰りを待ったか!男だますならもっと器用にやれ!馬鹿」と君香を突き飛ばすが、兄さんに殺されるなら本望ですと君香に泣いて縋られる。周旋屋のことを話し出す君香。このとき微妙に君香、嘘ついてますよね。話を無難に収めようという感じで。。。でも水谷さんの肩と腰の傾け方がとっても色っぽかったです。これは騙されるなぁと(笑)
宗吉は丸次のことを君香に話しだす。手切れ金を突きつけられて、証文まで書かされ、どんなに悔しい思いをしたか。だが、その金で君香の借金を返して、君香と夫婦になれるのならと我慢したのだと。自分のためにと泣く君香。それでも、これで晴れて夫婦になれる二人にはやがて笑顔が浮かぶ。
そんな君香を昔の男で新内語りの〆蔵(宮川浩さん)が追っていた。宗吉の話の途中から上手の扉が半分開いて三味線の音が流れるのですが、二人が去ったあとスポットライトがあたって〆蔵演じる宮川さんがコソコソ(( ̄_|と登場します。君香を見つけ、ニヤっとする表情に嫌〜な予感。。。
石原・荒物屋の二階
君香のことで師匠から縁を切られ、得意先からも見捨てられた宗吉には、お金を稼ぐことができなくなっていた。日銭を稼ぐために流しにまで身を落とした宗吉。
宗吉が出かけている隙に、〆蔵がやってくる。外で〆蔵に会い、よりを戻そうと言われ、承諾していた君香。だが、その後連絡が途絶えてしまったため業を煮やして〆蔵が宗吉の家まで訪ねてきたのだ。どうにか追い返そうとする君香。泣いて甘えてみるがその手はイマイチ通じません。それでも少しずつほだされていく〆蔵。なんだかいい雰囲気になってしまいます。
そこに荒物屋のお内儀さん(小泉まち子さん)が「お君さん。雨が降ってきたよ!雨!」と親指をたてながら慌てて駆け上がってきます。確かに雨も降り出しましたが、宗吉が帰ってきたという合図でした(笑)慌てて押入れに〆蔵を隠す君香。
雨に降られてフラフラになりながら宗吉が戻ってきます。どうやら風邪をひいた様子。「それなら直ぐにお休みになったほうが」と口に出してしまって慌てる君香。布団を出すためには押入れを開けないといけないですものね(笑)
幸いなことに宗吉は兄弟弟子に会うため、また出かけないといけないそうです。ほーっ(笑)
それなら「傘を」と言ってしまい、再び自分の口を押さえる君香。傘も押入れの中だそう。宗吉が後ろを向いてる隙に、少しだけ襖をあけて傘を取りだす君香。取り出した傘の骨が折れてます。
それを見て俗曲「"唐傘の 骨はー ば〜らば〜ら♪ 紙や破れても"だよっ」と唄う宗吉を演じる雄基さん!さすが上手いです。ここで拍手も起きてました。
苦労する宗吉を見て君香は再び芸者に戻ることを決意する。
日本橋葭町・房花屋
君香は小園と名前を変え葭町にある房花屋という置き屋にいた。火鉢の前に座り、少し自信ありげに振舞う君香。ここで、今までの甘ったるい声が、普通の声に戻ってました。
君香が留守のあいだ、疎遠になってきた宗吉が思いあまって房花屋に訪ねてくる。留守番をしていた周旋屋の山崎と話すうち、君香が置き屋の主人と深い仲になってしまったことを知る。それを聞いた瞬間、宗吉の火鉢をたたく音が 驚き・怒りを客席に伝えます。「欲も見得もなく、口説かれると見境なく、誰の言うことでもきくのが、あの女の病でして」山崎の話を聞くうちに自分が君香から聞いた話とは違うことに気づいて愕然とする宗吉。思いつめた表情で言葉無く房花屋をあとにします。
厩橋河岸
厩橋近くの河岸で、君香と二人きりになった宗吉。いまだに山崎の話を信じることもできない。「苦し紛れにつくその時々の嘘。お前は人を騙せる女じゃねぇ。」周りに悪縁だと聞かされても君香が悪い女だと思えない、思いたくないと切々と口にする宗吉。最後には本心を聞かせて欲しいと、頭まで下げて迫る。
だが、君香は一言も口にせず、宗吉は「ここまで言っているのに」と刃物を取り出し、君香を刺してしまう。ゆっくりと倒れる君香。この場面はすごく情緒のあるシーンでした。宗吉は走り去り、倒れこんだ君香のうえに紙ふぶきが積もります。
石原・蕎麦屋
場面は変わって蕎麦屋。机に突っ伏していた宗吉は"はっ"と顔をあげる。君香を刺した宗吉。夢だったのか?現実なのか?混乱したまま、落ち着こうと水を一杯飲み干します。
と、店の外が騒がしくなってきます。お店の人に何の騒ぎかと尋ねると、「へぇ、この先の河岸で人殺しがありまして。」葭町の芸者が、新内語りの流しに殺されたと… 思わず立ち上がる宗吉。犯人は〆蔵でした。結局、君香は〆蔵に殺されたのです。
君香が殺されるのを察知し、あんな夢を見ることになったのでしょうか?宗吉・〆蔵 どちらが君香を殺してもおかしくない運命だったのでしょうか?座りこんで、呆然とする宗吉。夢のなかで自分が殺した君香が、現実にも殺されたことを知り愕然として少し冷静になって呆然とする表情。無言の雄基さんに惹きつけられたシーンでした。
駒込にある寺
最初のお墓の前のシーン。白いスリーピースの男が君香に話かけます。あの日、君香は宗吉の家に寄った帰りに〆蔵に殺されたとか。「宗さんと行き違いにならなければ〆蔵に殺されることなどなかったのに… それとも宗さんが〆蔵の代わりにお祭佐吉(芸者殺し)になっていたかもしれないなぁ。人の身の運・不運は分からないものだ」と。
君香は宗吉に何を話に行ったのでしょうね。本当に置き屋の主人と深い仲になってしまったのでしょうか?やはり別れ話でしょうか… それとも…
宗吉が君香を刺したシーン。屋外なのに君香は足袋だけなのですよね。あとから思うと夢だったんだなぁと。。。
雄基さんのほかにも水谷さん宮川さんも客席を通るシーンがあり、後ろを向いたり前を向いたり、いろいろと面白い舞台でした。期待していた雄基さんの三味線はちょっとだけだったのが残念。宮川さんの「火の用心」は特に千秋楽に近くなるほど上手になってましたよね〜
最初のほうに宗吉にも「結句、気楽で」という台詞があるのでせすが、時代の言葉ですよね。イントネーションまで大事にされ再現できるのは新派の力があってこそ。自然にできてる雄基さんもさすがだなぁと(笑) そんな所も楽しめました。
舞台上には紫陽花が飾られ、そこに登場する生活感いっぱいの荒物屋の二階(笑)。緞帳ではなく半透明のスクリーンを何層も使って不思議な空間が作られ、夢と現実がごちゃ混ぜになったような驚きのラスト。パンフレットに書かれていた「大人の童話」というフレーズにぴったりな舞台でした。
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永井荷風原作の新派公演ということで小説を読んでるような舞台でした。
一幕ですし、これまでの舞台とは、やはりちょっと違うような…
驚いたのは雄基さんの出番が多かったことかも(笑)
ほぼ出ずっぱりなのでファンとしては嬉しいです〜
水谷さん演じるお君に翻弄される雄基さん演じる宗吉。
これが一番の見所です。
そうそう、8列目と9列目の間の通路を雄基さんがお通り〜♪
Posted by: sato : April 17, 2005 1:34 AMsatoさん、レポ早〜い♪
通路からの登場はほんとに驚きましたよね!
宗吉お師さん…素敵でしたね (-- *)ポッ
早くもう一度観たいなぁ。
ちょっと荒っぽい演技も素敵ですよね〜
「虹の橋」といい宗吉さんは女性に翻弄される運命に
あるのでしょうか?(笑)
「ふるあめりか…」と同じようにじわーっと効いてくる舞台ですね。
パンフレットに「大人の童話」とありましたがちょっと納得。
さらに「昔の下町言葉をイントネーションまで正確に再現」とも
書かれてましたが、確かに「いま何と?」という台詞も。
意味も分からなかったのがひとつ。
〆蔵さんがお君に「オレが"せんくち"だぜ」という台詞。
「せんくち 【先口】 順番が先であること。また、申し込み・
約束などを先にしたもの」とあったのですが。。。
そういう意味?うーん、原作が読みたいかも(笑)
あぁ〜お二人ともレスが早い!(笑)
うん・・・本当に雄基さんの登場には驚きましたぁ。
なかなかニクイ演出ですわぁ。
たまるさん
お師さん・・・ってそう書くんだぁ・・・
なんて言ってるの?なんて思ったけど。
先口・・・って時代劇とかでも良く使いますよね?
飲み屋とかで一番先に来店した人とかを「口開けの客」とかいいますけど・・・
「大人の童話」ほんと納得ですねぇ。
今回は、小さな劇場を上手に使っていて演出的には面白いですよね。
首の体操して柔らかくしないとぉ〜
雄基さん殆ど出ずっぱりなんですね〜
は〜観たかった・・・・
しかも通路を通られる!席近くの方、ラッキー!!
原作は読んだんですけど、一幕しかない舞台って言うのがどんなのかしらって思っていました。
舞台終了後の詳しいレポ、楽しみにしていま〜す。
「せんくち」、私が物知らずなだけだったですね(;^_^A
「千口」かと思っちゃったんですよね〜 人気があるぞって意味かと(笑)
通路を通られる仕掛けは嬉しいですよね。
最前列中央あたりだと目の前に雄基さんが止まったりされます♪
水谷さんや他の役者さんも通路を通られるので
客席から「いろいろと楽しませてくれるわねー」の声が(笑)
かりのさんは原作もう読まれたのですね〜凄い!
やっと入手できたのでこれから読んでみますっ(・◇・)ゞ
そうそう、舞台入り口前のカフェエリア。
店員さんの後ろにサインが飾ってあるのですが
むかって左から2列めの上から2段目に今回の出演者のサインが。
もちろん雄基さんのも飾ってありました。
これからずーっと飾られるのでしょうか。