空のかあさま
空のかあさま −童謡詩人 金子みすゞとその母−
日比谷の劇場の多い一角。エレベータで4階へ。
やはり年配の方が多い。
物語の舞台は大正8年春の山口県。仙崎港の海を見渡せる山の中腹で池内淳子さん扮する金子ミチと、奈良岡朋子さん扮する ミチの親友 高橋歌子が登場。
歌子は夫を亡くしたミチに再婚話をもちかける。ミチの妹・フジは1年前に亡くなっていて、その夫 下関で大きな本屋を経営する・上山松蔵が再婚相手に望んでいるともちかける。
そこに ミチの息子・堅助と斉藤由貴さん扮する娘・テルが現れる。再婚話に賛成する堅助と戸惑うテル。母・ミチと二人になったテルは涙ながらに、「かあさんとは離れとうない。でも正祐ちゃんに 母さんを返してあげたい。お嫁にいって」と語りかける。実は、上山松蔵とフジの一人息子・正祐は子供ができない夫婦に望まれて貰われていったミチの息子だったのだ。堅助とテルはいなくなった弟のことを覚えていたのだ。
その年の6月、ミチは下関の上山家に嫁いだ。結婚式当日 息子・正祐が姿を見せず、不安に思うミチ。しかし松蔵から、松蔵・フジとの親子3人の合成写真を飾り再婚に反対していた正祐が、ミチならと写真をしまったことを知り、また正祐からテニスの試合で帰れないけれど..と祝福の速達を受け取り安堵するミチであった。
4年後の晩春、女学校を卒業したテルが従業員として働くため下関に移ってきた。
テルがやってきたと階段から駆け下りてくる 松村雄基さん扮する上山正祐。
小説・詩について文通を始めていた2人は、再会できることを心待ちにしていたのだ。桜もちを差し入れした歌子に「しー」と人差し指を口に当ててみせる。戸棚の陰にかくれて、テルを驚かせる正祐。10代の設定のためか、さっぱりとした髪型のためか、雄基さんさらに若返った感じでした。
ようやく再開できた2人だが、正祐は東京の書店に見習に行くことが決まっていた。残念がるテルに テルが詩を書き、正祐が曲を付け童謡を作ることを持ち掛ける。喜ぶテルにハーモニカを吹いてみせる正祐。北原白秋の「あめふり」
とっても綺麗に吹けていました。
「金子みすゞ」という名で投稿を続けるテルの作品が、多くの雑誌に載ることになる。書店の店先で母・ミチと喜ぶテル。斉藤由貴さんの コミカルな演技がかわいい。
そこに父・松蔵が倒れたとの連絡がはいる。あわてて駆け出すミチと 店を片づけ家で連絡を待とうとするテル。
さらに、関東大震災の一報が...
父・松蔵も一命をとりとめ、正祐も骨折だけで無事に下関に戻ってきた。
この頃 金子みすゞ代表作と言われる、「大漁」が発表された。
松蔵の入院する病院の庭先で、活躍を続けるテルと童謡について話に花をさかす正祐。雄基さんは このとき袴姿でした。さすが着こなせますね。
ハーモニカをテルに教えるといった いつかの約束を思い出し、仲良く練習をはじめる2人。それを見ていた、松蔵の妹・美代は 男女が肩を並べて歩いているだけで非難されるこの時代に外聞が悪いと2人を責める。テルはミチに、正祐に自分と兄弟であることを打ち明けた方が良いのではないかと相談する。だが、正祐を愛するあまり 血が繋がっていないと知られることを恐れる松蔵の気持ちを考え 打ち明けることはできないミチ。真実を知るテルは 「永遠に清い友達」と自分に言い聞かすのだ。
それでも 懲役検査で下関に戻ってきた正祐は戸籍を見て、自分が養子であることを知ってしまう。親は誰だと問う正祐に、外の女に産ませた自分の子供であると あくまで自分とは血が繋がっていると言い張る松蔵。周りの皆が自分を愛してくれていることには何の疑いも持っていないし、松蔵以外に何者も自分の父親ではありえないとの正祐の言葉に安心する松蔵ではあったが、従兄弟ではないなら テルと結婚させて欲しいと懇願する正祐に再び怒りをあらわにする。こうなったらと 松蔵が将来有望と期待する天宮良さん扮する店員・桐原とテルとの婚姻話を進める松蔵であった。
素行が良くないとの噂の桐原との結婚話に心配した 歌子がテルを訪ね本心を聞き出す。歌子に正祐が弟と知りながら 気持ちが通いすぎ、傾いていく自分が恐いのだと打ち明ける。気持ちを振り切るためにも 桐原との縁談が進んだ方が良いのだと。
このときナレーションで流れるのは 「露」
「露」
誰にもいはずにおきませう。
朝のお庭のすみっこで
花がほろりと泣いたこと。
もしも噂が広がって
蜂のお耳へはいったら
わるいことでもしたやうに
蜜をかへしに行くでせう。
婚礼の準備は進み、白無垢を準備する上山家に、兵役中 休みをもらった正祐が帰宅してくる。白無垢を見ると 怒りをあらわにし、自分が一人前になるまでの数年、店をまかせる人が必要なためにテルは結婚させられる。 そんなことは許すことできない、テルとの結婚を許してもらえないなら、かけおちすると 父・松蔵にくいかかる。ミチは、思わず 正祐は自分の産んだ子で、テルと血が繋がった兄弟であることを 告げてしまう。
桐原と結婚し ふさえという女の子までもうけたテルだったが、テルの活躍を妬み創作活動に夢中になり 自分に情を見せないテルが煩わしくなった桐原は娼婦通いを続けたあげく テルに病気まで移してしまう。病に冒されながらも金銭的に余裕もなく日々の生活に苦しむテル。桜もちを持って訪ねてきたミチにもう耐えることができないと 心の底を告げる。離婚を 申し込むテルに、病気のため子供ができなくなってしまった桐原は 別れるのは構わないが、ふさえを手放すことはできないと言い放つ。
この時代に 桐原が承知しないかぎり ふさえを手元に置いておくことはできない。一旦は ふさえを連れて上山家に戻ってきた テルであったが、桐原がいつふさえを引き取りにくるか 安心することはできない。松蔵・ミチ・テル・ふさえと親子3代で炬燵を囲み 桜もちを食べる幸福な時。ふさえも やさしく・無邪気にふるまう。いつのまにか 炬燵で寝入ってしまったふさえを 皆が温かくみつめる。
疲れたと言って 母・ミチにふさえを預けて 床につくテル。振り返りふさえを見つめ 愛らしいとつぶやくテル。
この時、テルはふさえを ミチに任せる心を決めていた。自分の命と引き換えに桐原の元ではなく、ミチのもとで ふさえが成長していくことを望んだのだ。
翌日、上山家に正祐が飛び来んでくる。テルから遺書めいた詩集が送られてきたと。不安にかられ 階段を駆け上がる ミチと正祐。悲痛な叫びをあげるミチ。 1人 階段を降りてきて、薬ビンを投げつけ 悲しむ正祐。最後のテルからの手紙を読み上げ 死ぬなと嘆きながら。。。
池内淳子さんのミチ役は はまり役ですね。彼女なら子供を育て上げてくれるという確信のようなものがありましたもん。悲しい結末で 涙が止まらないのですがテルの最後の決断が いまいち納得できないというか、入りこめないというか。桐原がふさえをひきとりに来るようには思えなかったため?
slinがありがたいことに健康に恵まれてて楽になるならいっそう...とか想像できないから?
まぁ slinの生きてきた環境とは時代背景が違い過ぎるためかな。
場と場の間に 金子みすゞさんの詩が朗読されるのですが、人が共に生きていくこと、自然と共存することの大切さが詠われています。
「私と小鳥と鈴と」
私が両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが、
飛べる小鳥は私のやうに、
地面を速くは走れない。
私がからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴は私のやうに、
たくさんの唄は知らないよ。
鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。
引用「金子みすゞ全集」(JULA出版局)